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パーチメント

 紙づくりが伝わる以前はパーチメントと呼ばれる動物の皮膚を書き物として、本の表紙として用いていました。半透明の少し黄みがかった、ときに黒い血管の模様のあるこの素材をこちらに来て初めて触りました。歴史の本などで名前は聞いたことはあったけれど、初めて触れた感触は、、、硬い! もしなんの知識もなく目隠しで触ったらプラスチックと間違えてしまうかもしれないくらいの硬さです。けれどやはり自然のもの、独特のなめらかさもあり、風合いも色も動物によって、その部位によって違う。触れば触るほどにそのしなやかさにほれぼれしてしまうほど。


books_14th

13-14世紀の本。右ふたつは木を、左のはパーチメントを
背に用いています。装飾もかわいく施されています。
まん中のボタンは本を閉じるためのもの。


 1966年、イタリアのフィレンツェでの大水害の際、たくさんの歴史的文化遺産や美術品がダメージを受けました。多くの貴重な本が被害を受けたなかでパーチメントで覆われた本は無事だったのだそう。それ以降多くの修復家がパーチメントを以前にも増して使うようになったそうです。けれど、クラスメートの話しではパーチメントを好んで使う修復家はあまりいないと言います。水に強く、保存性にも長けた素晴らしい素材ではあるけれど、伸縮性が激しすぎて糊を用いて表紙に貼りつけるときはなによりも難しい作業と皆口を揃えて言います。

 先々週の歴史の授業のなかで、16世紀にいまのルリユールの製本が確立される以前の12−15世紀の本をスライドで見せてもらい、実際に同じ技術で製本をしました。糊は用いずにパーチメントを縫い糸に使ったり、支柱に木や革を用いたり、とても興味深いものばかりでした。
 実際にほとんど見ることのできない時代の本を製本することができたことはとてもよい経験、またこれを違ったかたちでわたしなりの表現ができたらなと考えています。


九月十日 月曜日(とうとうお医者へ)


PeterFischli

先月、チューリッヒのKUNSTHAUSで観たPeter Fischli and David Weissの
展示で上映していたフィルム。パンダとくまの着ぐるみを着た奇妙なふたりの
(二匹の)やりとりはドイツ語がわからなくてもたのしめました。
最後はふたりが人間に見えました。


 
| cbl | - | 18:15 |
北欧製本家事情

 クララは5月に学校で知り合ったひとつ年下のスウェーデン人の女の子。アスコナで滞在するためのアパートが見つからず困ってたところ歳も近いのだし一緒に住んではどうかとの先生の提案に、ルームシェアなんてもちろん初めてのことだったのに、知らない誰かと住むなんて考えられないなんて話してたばかりだったのになにも考えずにオーケーしてしまいました。

 コペンハーゲンに自分のアトリエを開き、制作を始めたばかりでうまくいかないことも多く、もっと幅広いオーダーに対応できるようにあたらしい製本を学びたいとこの学校にやってきたクララ。デンマークには彼女を含め若い製本家はふたりだけ、より仕事の多い修復を学ぶひとは多いけれど製本家を目指すひとはヨーロッパの他の国でも年々減っているのが現状です。さらに北欧の国々では昨年で学校で製本を教えることをやめてしまいました。これでは若い製本家が育つはずはありません。
 
 そんな状況のなかでも彼女はクラッシックな製本だけにこだわらずに様々な切り口で製本家としてできる技術を生かした仕事を模索中です。まだ始めたばかりでクライアントとのやりとりがうまくいかないことも、制作の途中でオーダーを断られてしまったこともあるけれど決して弱音を吐いたりしない。彼女の前向きな姿勢にはいつも励まされます。
 
 「本を縫うのは遅いけど料理の支度はすごく早いのよ」と作業の遅いわたしを待つみんなに話して場を和ませてくれたこともありました。(ほめられてたんだかわかりませんが)焦らずに作業を進めることができたのも彼女のおかげ、しっかり者のクララにはいつも助けられてた気がします。同じ部屋でスカイプしたり、ショッピングモールで買い物したり、テラスでランチしたり、たくさん笑って、たくさん話したあっと言う間の6週間でした。
 
 今週日曜日、クララが再びアスコナにやってきます。最初の1週間はまたうちでふたり暮らし、日曜日の夜はクララの好きな献立を準備して待っていようと思います。


キッチン


クララがいると食料品もついたくさん買い込んでしまいます。
夕食はわたしの担当、早起きのクララは朝食担当。
日本食もかなりのお気に入り。


八月三十日 木曜日(今週きょうで8冊目、腰が痛い)

 
| cbl | comments(0) | 22:48 |
修復家の仕事

 ローザンヌに住むスイス人の友人シャンタルからCDが送られてきました。先月、訪ねたときに一緒に聴いた曲をわざわざ録音してくれたのです。添えられた手紙には「来週、夏の音楽祭にビョークが来るので聴きに行ってきます」とのこと。野外で聴く彼女の歌はどんなだろうかと想像してしまう。

 彼女は本の修復家として自分のアトリエを持ち、個人的なものや赤十字などからの依頼にも応えています。仕事場を少し見せてもらっただけで彼女がとてもよい仕事をしているのだと感じました。
 製本家は古い本を製本することもありますが、たいていはあたらしくきれいな本を製本、装飾を施すのが仕事です。傷みのひどい本を直す(治す)、傷を治療するお医者さんのような存在である修復家の仕事は同じ本を扱う仕事でも大きく異なり、彼女たちから学ぶことはとても多くあります。

 いまでも現存する16世紀頃の本は、機械での大量生産が始まる17世紀以降のものよりも状態がよく美しい本が多くあると言われています。ビブリオフィルと呼ばれる愛書家は古い時代の美しい本を美術品と同じようにコレクションしています。
 修復家の仕事は本の傷を治し、現状を安定させるために保護すること。古い時代の本を元の状態に戻すのは不可能です。その本が生まれた時代からこれまでの時間の経過を本の状態が物語ってくれている。だからこそ古い本のよさ、価値があるのです。けれども多くの愛書家は本をきれいにしてほしい、表紙が壊れてしまっているものにはより良い革を使ってきれいな装飾をと頼むと言います。傷のあった箇所をきれいにしてしまうのではなく傷があったのだということを隠さずに残すのがよい仕事であると考えられていますが、依頼があれば染み抜きのために漂白することもあり、本の中身は古くても外側はピカピカ、なんてことも少なくないそうです。

 修復家は、毎回異なる本の劣化の状態を知りそれぞれに合った修復をすることはもちろん、製本の技術も要します。とても繊細な仕事なので気難しいひとが多いのかなと思っていましたが、シャンタルのように陽気でおおらかなひとが多いのは意外でした。          
 フランス語で歌うはchanter(シャントゥール)、ケラケラとよく笑う彼女はフランス語、英語、ドイツ語を自在に操り、彼女がいたときのクラスはとてもよい雰囲気でした。先生はもちろん、毎週のように生徒の顔ぶれの変わるこの学校での授業は生徒のキャラクターで授業の雰囲気もがらりと変わったりするのです。

 来週はまたどんなクラスメートがやってくるのかといまからたのしみにしています。
 

紙

紙の下から光をあてて、紙を漉いたときの枠の線の間隔、ウォーターマークなど
からその時代を読み取ります。これは19世紀初めの手漉きの紙。


八月十四日 火曜日(焼きそばにイカをいれたらトレビアン)
| cbl | comments(0) | 22:02 |
暮らしと製本

 郵便局へ日本からの荷物を受け取りに。スイスに来てから何度友人たちからの小包に助けられたことでしょう。ときには原形をとどめないものもあったけれど(ハッピーターンが粉々)これらを包むときの彼らを想像するだけでうれしいのです。そして今回の荷物はまたずっしりと重い。
 思ってた(期待してた)通り「暮らしの手帖」でした。いまいちばんたのしみにしている雑誌です。クラスメートの子も、日本語が読めないはずなのにレイアウトや写真だけでとてもきれいだねとほめてくれました。中身の説明をしたいけれどタイトルでつまずききちんと伝えられません。「まいにちの生活に役に立つアイデアがたくさん詰まってるのだよ」と言いましたがそれだけではないような、まいにちの暮らしのことはもちろん、それ以上のなにかがこの1冊に込められていると思うのです。

 製本を始めたきっかけはほんとうに些細なことでした。語学留学はダメという母の「その国でしかできないことを勉強したいのなら援助をします」との言葉で留学雑誌をぱらぱらめくっていたときに見つけたのがパリにある製本の学校でした。いまはなきl'UCADで初めての製本講習を受けてからもう6年が過ぎました。ひとりで制作をはじめてもまだ自分が製本家であると名乗ることができず、もっと勉強したいとスイスにやってきました。
 ここではいろんな製本家に出合います。自分でアトリエを持ち個人的な注文を主に受けているひと、50人を超える製本家が働く半分は機械に頼った製本所で働くひと、デザイナーとして働いていたけれどより手を使っての仕事がしたいと製本所に通って学んでいるひと、図書館で古い本の修復を主にしているひと、本来は警察官(!)だけど趣味で製本をはじめたひと(でもプロ顔負けの道具持ち&技術も)など様々です。彼らと一緒に学ぶことで、自分のこれから先に進むべき方向が見えてきた気がします。できること、いまはできないけどできるかもしれないこと、できないからやらなくてよいこと、それを判断することができるようになっただけでも大きな進歩です。

 あたらしい「暮らしの手帖」が提案しようとしていること、古くから受け継がれてきたことを大切にすることも、同時にいまの時代の暮らしに合わせることも大切なのだということ、これまで読んできて感じたことです。自分の手から生まれる作品づくりもそうであればと、今夜はカレーにしよかななんて考えながら。


カレー

先日ロンドンの友人宅でカレーをつくりました。こちらもチキンカレー。卵は一緒に煮込んでもよいのですね。こんどは野菜も揚げてみよう。


八月四日 土曜日(そいえばきのうはグリーンカレー)
| cbl | comments(0) | 13:25 |
anniversaire

 7月もきょうでおしまい。スイスでめでたく誕生日を迎えました。
 きのうの夜、こちらより早く31日を迎えた日本からお祝いメールを、そしてスイス時間の24時にはオーストリアの友人からもメッセージをもらいました。今週は授業もないのでうちで作業をしたり、本を読んだり、きょうもなにして過ごそうかと悩んでいたら、、、こんどは東京からの小包! 日本のテレビ番組が録画されたDVD、すこしつぶれたたけのこの里とおめでとうのメッセージ。うれしくて早速観てしまいました。ありがとう。

 フランス人の友人、ベンジャミンにもプレゼントをもらいました。ギターかき鳴らして歌う自作の曲の入ったCDに手作りケース付きです。「作品の撮影をしたいのだけどうちじゃあ光がちょっと」と電話があり、来るなりドアの前でハピバースデーを歌いだし、プレゼントを隠し持っていました。ひとりじゃなかったです。Merci!

 一緒に撮影したのは先週作った本。クラッシックなFrench Bindingを少し簡素にした製本に紙の表紙を施すのですが、四つ角と花切れに革を用いたのは今回がはじめてでした。痛みやすい角に革を使うことで丈夫になる上、革の色と表紙の紙の色を遊んだりもできます。今回は背中のタイトル押しにも初挑戦です。5月にもこの機械を使った授業がありたのしくてやめられなくなりました。Hot blocking pressと呼ばれるこの機械は130℃前後に熱したタイプにフィルムなどで色をつけます。厚紙への折り目をきれいにつけることもでき、いろんな太さや長さの線(本来は文字間をつけるもの)で装飾したりもできるのです。いつか持てたらなと作りたいものあれこれ浮かんできます。


dufy and modigliani tatedufy and modigliani yoko


 31日も残りあと数分、いつもより7時間も多い誕生日でした。
 みなさんありがとう。


七月三十一日 火曜日(1ユーロ162円に)


きょうの2冊 
DUFY aux courses
MODIGLIANI portraits
petite encyclopedie de l'art (abc)
| cbl | comments(0) | 23:45 |
cbl

 きのうの夜、ドドドという花火の音がどこからともなく聞こえてきました。湖の方を見てもなにも見えません。うーん、どこから? キッチンの窓からかすかに赤やらピンクの光が見えます。どうやらロカルノ方面で花火大会の様子。しかし向かいのお家がちょうど妨げに、、、と思ったらバスルームの窓から見えました。きれい! パリでの独立記念日の花火はメトロを出た途端に終わっていたので遠くでも見ることができてうれしいです。浴衣でなくても、りんご飴がなくっても、花火はやはりいいものです。n'importe ou!

 さて、あしたは学校。3週間もの休みの間午前中はのんびりしていたので(つまりかなりの朝寝坊)あしたの朝ちゃんと起きられるのか心配。

 1月の終わりから、簡単なものも含めてこれまでに30以上の技術を学んできました。この学校はふつうの製本の学校とは違い、ある程度基礎的なことを学んだ上で4年以上の経験がないと授業を受けることができません。(来てから知りましたが)最初は皆についていけるのか、語学もままならないのに来てしまったことを後悔したこともありましたが、いろんなひとに助けてもらいなんとかこれまでやってきました。

 授業はドイツ語、英語、フランス語(ときにはイタリア語)でされるため、ヨーロッパの各地から生徒がやってきます。クラスは週単位なのでひとつの技術を学ぶためだけに来るひとも多く、月曜日にはじめましてをして、金曜日にはさようなら。長期滞在者には少し寂しいシステムではあります。これまでに、糊を使わない製本、アルバム作り、両開きの本づくり、箱作り、紙の歴史、メニュー作りなど帰国時の荷物が心配なほどたくさんの作品をつくりました。
 さて、これらの技術をどうしていくか? それは学校で学ぶことではありません。この技術を生かしてできること、それぞれ各自で発展させていくのがこれからの課題です。自分の作品を制作をするだけでなくこれまで学んだ技術を教えたり、機械ばかりに頼るだけでなく手でもこれだけのことができるということを提案できたらなと、漠然とですが考えています。

 といっても、まだなにも決まってはいないのですが。

 花火も観たし、旅行もしたし、日焼けもしたし。これからは先のことも見据えた制作をしていきたいと考えます。


七月二十二日 日曜日(ビーチでスイカ)


糸

授業で用いる糸の棚。
太さごとに並んでいます。
細めの40号をよく使います。
| cbl | comments(0) | 11:38 |
雨のにおい

 先週、日本からの小包に友人のつくった冊子が同封されていました。今回の特集は「雨」。梅雨のないスイスで、彼女の選んだ言葉が日本の梅雨を伝えてくれました。

 スイスの南、チチーノ州にあるこの街はマッジョーレ湖という湖の湖畔にあり、今の時期はみなでビーチ(らしきもの)でピクニックをしたり、泳いだりすることができます。先週は年に一度の音楽祭もありとてもにぎやかでした。

 わたしの通う学校はCentro del bel libroという製本と本の修復を学ぶことのできる学校です。先生はそれぞれの科にひとりずつ、生徒も多くて8人のほんとうにちいさな学校です。それぞれのスキルアップのために、あたらしい技術を学ぶために、ヨーロッパ各地から製本家が集まります。わたしは彼らの多くが学んできたような技術を身につけていないので彼らから学ぶことはほんとうに多く、話しを聞くだけでもとてもためになります。

 アスコナのこと、学校のこと、製本のこと、友人が梅雨のにおいを伝えてくれたようにすこしでもこの街の空気を伝えられたらなと思いました。

 きょうはアスコナも雨降りの一日です。


七月三日 水曜日(家賃を支払う)


lago Maggiore







| cbl | comments(0) | 10:15 |

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